ここ数年、モンテッソーリ教育が話題になっていますよね。
モンテッソーリをはじめとした、既存の枠にはとらわれない、
独自の方針で子どもたちと向き合うスタイルは「オルタナティブ教育」とよばれます。
今後ますます注目されるのが、このオルタナティブ教育です。
「すさまじいスピードで変化する世の中で、うちの子はたくましく生きていけるのだろうか?」
この記事は、そんなお子さんの幸せな将来を願う、親御さんのためのものです。
この記事でわかること
・今の子どもたちが大人になるときに、必須な能力
・オルタナティブ教育が注目される理由
・モンテッソーリ教育、シュタイナー教育の特徴と共通点
・子どもの才能をのばすため、今すぐ実践できること
想像してみてください。お子さんが大人になったところを。
休日だけを楽しみに、肩を落として仕事に向かう
得意を活かした仕事につき、生き生きとやりがいを持って取り組む
どちらの姿を見たいか、答えは聞くまでもありませんよね。
教育のあり方を考えることが、その後の生き方を方向付けるきっかけになるかもしれません。
20年後に求められるのはどんな人材?
今オルタナティブ教育が、注目されている理由。
それは未来の社会で、活躍できる人を育てるためです。
「どんな人材が将来活躍するのか」を知るには、
未来がどんな社会になるのかを知る必要があります。
今の子どもたちが大人になる20年後、30年後の社会はどんな世界なのでしょうか。
20年前にはスマホやSNSが当たり前になるなんて想像すらしなかったから、これから20年の変化もすごく大きそう。
子どもたちが生きる、未来の日本社会のすがた
実は2022年の8月に、以下のような方針が経済産業省より発表されました。
旧来の日本型雇用システムからの転換
好きなことに夢中になれる教育への転換
経済産業省は2030年に向けて、今から体制を変え、
2050年には全く異なる社会システムにすることを目指すと掲げています。
2050年といったら、今の3歳児がちょうど30代に入る頃です。
では子ども達が働き盛りになる頃、具体的にはどんな能力が社会で求められるのでしょうか?
デジタル化や、脱炭素化という時代の流れをふまえて、
2030年、2050年の社会で求められる能力を推測したものが以下となります。
求められる能力の変化
2015年 | 2050年 |
注意深さ・ミスがないこと | 問題発見能力 |
責任感・まじめさ | 的確な予測 |
信頼感・誠実さ | 革新性 |
基本機能(読み、書き、計算、等) | 的確な決定 |
スピード | 情報収集 |
柔軟性 | 客観視 |
社会常識・マナー | コンピュータスキル |
粘り強さ | 言語スキル:口頭 |
基盤スキル | 科学・技術 |
意欲積極性 | 柔軟性 |
2015年と比較すると、「柔軟性」の他は全て入れ替わっていますね。
これまで重要視されてきた勤勉さは、AIの普及で人間にはさほど求められなくなります。
代わりに、個々人の内側から生まれる気づきや、創造性が評価の対象となるのです。
なるほど。『がんばる人』 よりも 『自分で考えられる人』が必要とされるのね。
でもそれってオルタナティブ教育と、どう関係してるの?
なぜ今オルタナティブ教育が求められているのか?
2015年の社会で、必要とされた勤勉さは、日本の集団教育の成果とも言えるでしょう。
与えられた課題に「みんなで仲良く」取り組む教育で、
私たちの多くは一定以上のスキルを身につけることができるようになりました。
しかし、これからは「みんなと一緒に」よりも、それぞれの長所を認めて、
「自主的に考えられるように」サポートする教育が求められるのです。
でも教育方針を転換するって言ってるのは経産相よね。文科省では何か対策をしているのかしら?
もちろん文部科学省も、個人の特性を伸ばすための個別教育を重要視しています。
2020年代を通じて実現すべき「令和の日本型教育」の姿として個別最適な学びをあげています。
具体的には以下のとおりです。
- 支援が必要な子どもにより重点的な指導
- 特性や学習進度等に応じ、指導方法・教材等の柔軟な提供・設定
「文部科学省 『令和の日本型学校教育』の構築目指して」より引用
- 子供の興味・関心等に応じ、一人一人に応じた学習活動や学習課題に取り組む機会を提供
一人一台端末の配布を目指すGIGAスクール構想もありますし、タブレットなどを用いた学習も進められています。
一方で、教員にかかる負担についての問題が近年大きく取り上げられています。
文部科学省でも「学校における働き方改革」として教員の超過労働対策に現在進行形で取り組んでいるのです。
教員の負担軽減が叫ばれる中での、「一人一人にあわせたより細やかな指導」というのは実現までに多くの課題があることは明らかでしょう。
現に経済産業省は『学校の外で多様な才能を開花させる「サードプレイス」を広げるべきである』と訴えています。
つまり、文部科学省の管轄する多くの学校については、大きな転換をすぐに期待することはできないと言えます。
じゃあ、どうやって個人の力を伸ばしていくの?
この疑問に答えてくれるのが、教育方針を独自で設定できる、
オルタナティブ教育という選択肢なのです。
どんなオルタナティブ教育があるの? モンテッソーリとシュタイナーを比較
オルタナティブ教育と一言でいっても、インターナショナルスクールや、
フリースクールなど多様なスタイルを含みます。
今回は、世界の様々な国でも広く取り入れられている、
モンテッソーリ教育と、シュタイナー教育について見ていきます。
どちらも初等教育以降もありますが、
この記事では、就学前の幼児教育に焦点を当てて紹介します。
実生活に活かせるメソッド モンテッソーリ教育の特徴とメリット
モンテッソーリといえば、「棋士の藤井聡太さんを育てた教育」で有名だけど、実際に他の保育園や幼稚園とどこが違うんだろう?
モンテッソーリ教育はイタリアで始まりました。
今では世界中で広がり、モンテッソーリ教育を行う施設は2万校を超えるそうです。
特にアメリカでは大きなムーブメントとなり、絶大な信頼を得た教育法となっています。
モンテッソーリ教育の特徴は主に以下の通りです。
- 医学ベース
- 教師は子どもと一定の距離感を保つ
- 敏感期という考え方
- ユニークな教具
医学ベース
モンテッソーリ教育の創始者、マリア・モンテッソーリは
医者として子ども達を観察する中で、教育の重要性に気付きました。
その教育方針は「子どもは自ら育つ力をもっている」という考えに基づいています。
医者という立場から、体や脳の機能を科学的に捉えて考案された教育法です。
教師は子どもと一定の距離感を保つ → 自主性がつく
モンテッソーリ教師達は、つかず離れずの、いわば道しるべ的存在と言えるでしょう。
「子どもには自ら育つ力がある」という考えのもとで、
教師は「教える」のではなく、成長に最適な環境を整える役わりに徹します。
教師と子どもとの距離感は、「困っているときは子どもが助けを求められるくらいには近く、
かといって、いつでも手伝ってもらえると頼るには遠い」のが理想とされます。
教師は子どもたち一人一人に適切な距離を保てるように、常によく観察して、
それぞれの特性を把握します。
子どもたちを信じて見守りながらも、必要以上に手助けしないことで、
自主性を育てるのね。
敏感期という考え方 → 集中力が高まる
モンテッソーリ教育では各発達の段階には、
それぞれ興味を示す時期があるとし「敏感期」と呼びます。
それぞれの子が興味を示すタイミングで、
適切な教具や活動を用意することで深い習得を目指します。
「好きこそ物の上手なれ」ってやつね。子どもって好きなことしてる時は、
声をかけても反応しないほど熱中することがあるし、集中力がつくのも納得。
ユニークな教具とおしごと → 学習の習得度が深まる
モンテッソーリ教育では「教具」と呼ばれるあそび道具を使用します。
教具は、集中しやすく、概念的な理解が進むように計算してデザインされています。
見た目が美しいのも特徴です。
教具を使った活動は「あそび」ではなく、「おしごと」とよばれ、
子どもたちは毎日「おしごと」をします。
手先を使うことにフォーカスされた教具を日常的に使うことで、
成長するごとに必要になる生活の動作の基本を学ぶのです。
想像性を最大限に引き出す シュタイナー教育の特徴とメリット
シュタイナー教育はオーストリア人のルドルフ・シュタイナーによって、
ドイツで誕生した教育法です。
日本には、1980年代に導入され、現在では世界60カ国で取り入れられています。
シュタイナー教育の特徴はこちらになります。
- 哲学ベース
- 芸術系プログラムが豊富
- 読み書きを教えない
- メディア制限
哲学ベース
創始者のルドルフ・シュタイナーは、哲学者としてのバックグラウンドがあります。
精神について深く研究した人によって考えられたのが、シュタイナー教育です。
そのため、こころや芸術など、目には見えない部分の成長にも重点が置かれています。
芸術系プログラムが豊富 → 感性が磨かれる
シュタイナー独自のプログラムに、「オイリュトミー」があります。
オイリュトミーは音楽や、詩に合わせて、身体を動かすプログラムで、
単なるダンスやおゆうぎではなく、耳で受け取ったことを、
身体を通して表現するという芸術科目です。
園内ではゆるやかなリズムの歌もよく歌われます。
教師も子どもたちも声を張り上げるのではなく、やさしく穏やかに歌うのが特徴です。
他にもにじみ絵や、編み物などの手仕事にも日常的に取り組みます。
読み書きを教えない → 安心感、自己肯定感が高まる
7年区切りで成長段階を分けて考えるシュタイナー教育では、
7歳までは読み書きを教えません。
ものがたりも、絵本を読み聞かせるのではなく、教師が口頭で語り聞かせます。
0〜7歳までは身体の発達期にあたるので、他の情報を入れて
成長を混乱させないという目的のために、読み書きはあえて教えませんが、
8歳以上のプログラムでは具体的な学習が始まります。
小さなうちから、「できる」「できない」で比べることもないから、自由にのびのびと過ごせそうね。
メディア制限 → 想像力が育つ
シュタイナー教育を行う施設ではテレビや、タブレットなどはありません。
子ども達に、園内ではテレビやゲームなどの話はしないよう指導するところもあります。
理由は二つ、テレビの刺激が強いためと、受動的動作だからです。
シュタイナー教育では五感をはたらかせ、身体を使って
自由に世界を感じとることを重要視します。
そのため、受動的な活動となるテレビなどのデジタルデバイスは、敬遠されています。
確かに、一度テレビを見始めると、画面の前にすわってじーっと動かないのはよくある光景ね。
モンテッソーリ、シュタイナーの共通点
モンテッソーリ、シュタイナー、どちらの教育法も、
子どもたちが過ごす環境を整えることを重要視しています。
環境を整える上で、下記のように共通して配慮されていることもあります。
- 本物の素材
- 手を使った活動
- 縦割りクラス
本物の素材
食事の場面では、陶器のお皿やガラスのコップなどが使われることが多いです。
割れることを恐れてプラスチックを用意するのではなく、
本物の素材に触れることで、感覚を刺激することができます。
また、割らないように気をつけて扱うことも、実践的な練習となります。
手を使った活動
モンテッソーリ教育で用いられる教具は、子どもの手の動きを考えてデザインされています。
シュタイナー教育でも、編み物など細かな手の動きを必要とする活動があります。
手の動きを学ぶことは、人間の生活動作の基本を習得することにつながるでしょう。
また、脳の活性化にもよいと言われる点でも指先を使うことは有益です。
縦割りクラス
縦割りクラスとは、年齢別ではなく、3〜6歳など
幅を持った年齢の子ども達で構成されるクラスのことをさします。
年少者は年長者をお手本として模倣したり、未来の自分をイメージすることができます。
また年長者は年少者への接し方を学んだり、
手助けすることで人の役に立つ喜びを感じることができます。
どの年齢層にとっても新しい刺激を得られるのが縦割りクラスのメリットです。
どうやったら才能溢れるように育てられるの? 家庭でできる方法は?
モンテッソーリやシュタイナー教育の魅力は分かったけど、保育園や幼稚園は限られてるし、費用的にも通うのはハードル高めよね。 何か家でもできることはないのかしら?
実はモンテッソーリやシュタイナー教育のいいところを取り入れて、
家庭で実践できることはたくさんあります。
子どもの才能を伸ばすために大切なこと
- 先回りせず、じっくり見守る
- たくさん外に出て、体験から学ばせる
- 時には一緒にやってみる
先回りせず、じっくり見守る
親は子どもの性格がよくわかるからこそ、先回りしてしまいがちです。
その子自身や、お友達にケガの危険がある場合は別ですが、
手を出したい時、口を出したい時に少しがまんして見守ってみましょう。
子ども自身の力で乗り越えて得られた達成感は、その子にとって特別なものになります。
難しくて、助けを求めることもまた学習です。
一人ではできなくても、協力すればできることを学べます。
たくさん外に出て、体験から学ばせる
大人と比べて、子どもは感覚器官がとても柔軟です。
目だけ、耳だけを使って学ぶのではなく、複数のセンサーを同時に使って
世界を感じ取ることができます。
五感をフルに働かせることができる最良の学び場は外です。
短い散歩でもかまいせん。外に出て、目で見て、耳で聞いて、匂いをかいで、
いろんなものを触らせてあげてください。
そして、何を感じたか、何が不思議だったか、会話してみてください。
答えが出ないことでも大丈夫です。
「自分で考える」「自分で課題を見つける」訓練につながるでしょう。
時には一緒にやってみる
平日は忙しくても、休日余裕のあるときには、
一緒にそうじや料理をしてみることをおすすめします。
子どもは大人のまねをしたがります。
子どもからすると大人の仕事を手伝うことは大きなミッションです。
手間も時間も倍かかるでしょうが、完了したらたくさんほめてあげてください。
大きな達成感を得られて次のお手伝いにつながるはずです。
今日からできる! おうちで学べる子どもの「おしごと」
手や、指先を使った作業は、アイディア次第で家庭でもたくさんできます。
今日実践できる簡単なアイディアを3つ紹介するので、参考にしてみてください。
ジッパー上げ下げ
パーカーなど、ジッパーつきの服をハンガーにかけて、子どもの手の届く高さにつるします。
目の前で親がジッパーを上げ下げするところを見せたら、子どもはきっとマネしたがるはずです。
ジッパーのつまみを上手につかむのが難しい子どもには、
フードのひもをひっぱって遊ぶのも楽しめると思います。
スイッチの入切
スイッチの形はご家庭によって異なるかと思いますが、
一般的なタイプの場合でも、正しい場所を押さないと作動しません。
①目標とする位置を見極める
②正しい位置に指を置く
③正し力量で押す
スイッチ一つを押すだけでもこれだけの工程が必要となるのです。
さらに、つまみのついたトグルスイッチの場合には、より細かい指先の動きが必要になります。
照明スイッチの入り切りは、動作の結果が目に見えてわかるのでお子さんにとっても楽しいはず。
(※遊ばれると困る箇所や、危険なスイッチは、勝手に触れられないよう対策をした上で行ってください)
買い物袋からの仕分け
お買い物から帰ったら、袋から取り出す作業をお子さんに頼んでみてください。
大きなもの、小さなもの、丸いもの、棒状のもの、
それぞれの形に合わせて、いろんな手の動きが必要になります。
柔らかいものはそっと、重たいものは両手で力を入れてと、
対象に合わせた柔軟な対応を学べるでしょう。
年齢に合わせて、袋から出すときに、色や、温度、形などで
分けてまとめるのも学習になっておすすめです。
まとめ
子どもたちが、生き生きと、笑顔で未来を過ごすために、今できることはたくさんあります。
子どもたち自身がもつ力を信じて見守りつつも、肝心なところではしっかり支えてあげられる。そんな親でありたいですね。