STEAM教育=パソコン上達ではない! STEAM教育の目的とは? 正しく知って家で学びを深めよう(小学生向け)

小学生

次々と新しいテクノロジーが話題となる現代、STEAM教育の重要性を耳にすることも増えましたよね。
学校ではプログラミングが必修となって2年が経ち、一人一台端末での授業も当たり前となってきています。

自分たちの頃にはなかった教育環境にいるお子さんに、どのようなサポートが必要なのか迷う親御さんもいるのではないでしょうか?

「プログラミング教室に通わせた方がいいのかな?」

「やっぱり家でもタブレットで学習する方が今後のためになるのだろうか?」

など、いろんな疑問があるかと思います。

そんな中、まず考えてほしいのは、なぜSTEAM教育が大事なのかです。
STEAM教育の目的を正しく理解すれば、適切なサポートをすることができるようになります。

子どもたちが大人になる頃、世界はさらに様変わりしているでしょう。
教育変革の真っ只中にいる彼らですが、ご家庭でできることがたくさんあるのも事実です。

特に、親との関わりが多い小学生のうちは親子のコミュニケーションの中で学びを深めることも大いに期待できるので、参考にしていただきたいと思います。

STEAM教育とは

STEAM教育とは、以下の5つの領域を組み合わせて横断的に学びながら学習するスタイルの教育をさします。


S Science    科学
T 
Technology   技術
E 
Engineering  工学
A 
Art       芸術(リベラルアーツ)
M 
Mathematics  数学

 

STEAM教育はなぜ重要か

STEAM教育は日本だけではなく、世界的に見ても、多くの国が力を入れて取り組んでいます。
なぜ今、STEAM教育が重要視されるようになったのでしょうか。
その背景にあるのは、社会の大きな変化です。
 
 

始まり

STEAM教育の前身にはSTEM(ステム)教育があります。
STEMという言葉は2001年にアメリカで生まれました。

アメリカでは、第二次世界大戦以降、ソ連との緊張関係から、科学技術への取り組みを強化する姿勢にともなって教育面でも、科学や数学力の向上を求める動きが長くありました。

しかし、テクノロジーの急速な進化に対して、技術者層の圧倒的不足という状況が生まれ、さらなる対策が求められました。

その結果、2009年オバマ大統領により「イノベーションのための教育」が宣言されたことをきっかけにSTEM教育は加速していきます。

 

STEM(ステム)からSTEAM(スティーム)へ

STEM教育はその後A(Art)の分野を加えてSTEAM教育と呼ばれるようになります。
Artが表すのは、デザインなどの「芸術」はもちろんですが、リベラルアーツも含んでいます。
リベラルアーツとは、人文科学、社会科学なども合わせた、教養全般ともいえます。

現代の社会は、文系、理系と単純に分けられるものではなく、様々な要素が絡み合って成り立っているため、教育についてもあらゆる分野を組み合わせて考えるべき、という考えのもとにAが加わることになりました。

この考え方は世界共通ではありますが、国や地域によっては、あえて表記を変えずSTEM教育の名のもとにリベラルアーツも含めて学習を進めているところもあります。

 

STEAM教育の目指す先は?

社会の変化に応じて必要度を増したSTEAM教育ですが、STEAM教育によって目指す先はどのようなものなのでしょうか。

  

STEAM教育の目的

文部科学省はSTEAM教育の目的について以下の2点をあげています。


■科学・技術分野の経済的成長や革新・創造に特化した人材育成
■STEAM分野が複雑に関係する現代社会に生きる市民の育成

文部科学省「STEAM教育等の教科等横断的な学習の推進について」より引用

わかりやすく言い換えると、こうなります。

科学・技術を使って、新しいビジネスモデルを創り出せるイノベーション人材の育成

これからのAI化社会でも、仕事を勝ち取れる人材の育成

GoogleやAppleなど、世界を巻き込んだ大きなイノベーションは日本発信でないものがほとんどです。技術や精密さにおいては、長らく世界的に高い評価を受けてきた日本ですが、前提から覆すような革新的なサービスを作り出せる人材を今国は求めています。

「そんなことができるのはごくひと握りで、あとの人間には関係ない話」
とは言っていられません。
たとえイノベーターを目指さないとしても、AI化の進む社会でこれまで通りでいたら取り残される一方になる恐れがあります。

なぜなら今ある業務の多くは、今後ますます機械化されていくからです。
人間として求められる多くの業務は、単純ではなく、より複雑な課題への取り組みとなっていきます。

 

具体的にどんなスキルが必要か

では、AI化の進む社会で生き抜くためには、具体的にはどんな能力が問われるのか詳しくみてみましょう。
以下はWEF(世界経済フォーラム)が発表している2025年に必要とされるスキルTOP10です。

赤く囲まれた項目に注目してください。
これらの項目がSTEAM教育を通して、特に獲得したい実践的スキルになります。


複雑な問題解決能力
クリティカルシンキング
創造力(独自性、先見性を含む)
技術力(設計、活用を含む

クリティカルシンキングとは、前提条件も含めて、様々な角度から考察することで、本質的な課題を見つけて解決までを論理的に思考する方法です。

創造力は単にものを作ることではなく、現状と将来のニーズを分析、推測した上で、他にはない新しいものを生み出す力をさします。

技術力も創造力と同様です。単なる操作ではなく、今ある課題解決のためはもちろん、今後生まれるであろうニーズに対する技術をデザイン、開発する力が問われています。
技術自体はもちろん、どう使いこなしていくかの思考部分も重要視されているのです。

この、クリティカルシンキング、創造力、技術力をうまく組み合わせることで、複雑な問題を解決することが期待されます。

 

小学生へのSTEAM教育対応策

ではこれらの問題解決能力を身につけるため、具体的には、どんな内容の対策が現在小学校で行われているのでしょうか。国を挙げての大きな取り組みは、以下の2点です。

 

GIGAスクール構想(2019年〜)

GIGAスクール構想では、一人一台端末環境を整えることをスタートラインとし、情報活用能力の強化に取り組む施策です。
文部科学省では、新学習指導要領を始め、動画なども用いて各教科ごとのICT活用方法や事例を教員向けに提示しています。
また、学習だけではなく、端末を使用するさいのマナーについての指導の方針もまとめています。

メリット
各教科の授業で日常的に使用することで、端末の操作を習得できる

黒板を書き写す一斉授業だけではなく、個別の能力に合わせた進度で学習を行える

写真や、図、データなどを活かした学習が進む

データを共有することで、他者との意見交換が進む 

 

プログラミング教育の必修化(2020年〜)

プログラミング教育の必修化は2020年度から始まりました。

小学校においてのプログラミング教育の大きな目的はプログラミング的思考の習得になります。

プログラミング的思考とは、目的(課題、ゴール)に向けて、問題を適切に分割して、論理的に順序立てて解決に導く思考です。

そのため、デジタルデバイスを使わずに思考方法を学ぶ低学年向けの内容もありますが、
主にはパソコンなどの端末を使いながら、物事の作動する仕組みなどについて体験的に学習します。

メリット
コンピューターや物事の作動する仕組みを体験的に学習できる

プログラミング体験を通じて、課題の発見、問題の分割と対応の順序だて、解決のための試行錯誤という論理的な問題解決能力を身につけることができる

 

 

授業スタイル

小学校での端末活用、プログラミング授業の取り入れ方には、複数のパターンがあります。

  • 各科目に取り混ぜて学習
  • 総合的な学習の時間を利用
  • 科目学習とは別の個別時間を作って
  • クラブ活動などの時間を利用して希望者に

上記の形式を組み合わせて取り入れますが、その方法は学校ごとによって異なるため、一様ではありません。
具体的にどのような授業が行われているか、実際の事例を紹介します。

 
 

小学校での取り組み事例


小学校でのSTEAM教育事例を3つご紹介します。

戸田東小学校 PBL

戸田東小学校・中学校では、2020年よりPBLと呼ばれる、プロジェクトベースの学習に組んできました。
PBL(Project Based Lerning)では、具体的な目標を設定して、目標達成のために必要な過程を考えて具体的な施策を行うという一連の動作を学びます。

実際に行われたプロジェクト例には、「習字の筆洗いの手間を減らしたい」といった生活に密接したテーマについて解決策を考え、プレゼンするといった取り組みがあります。

また、戸田東小中学校は産学官の連携を進めており、2021年4月にはインテル株式会社と提携して、ハイスペックPCや、3Dプリンターなどを備えたSTEAM Labが設置されました。

PBLを通じて、論理的思考や、目標達成に向けたチームでの協力体制などを身につけ、STEAM Labによって、よりクリエイティブな施策にも挑戦している学校で、全国から教育関係者が視察に来ています。
2023年2月には岸田内閣総理大臣及び永岡文部科学大臣も視察に訪られており、その教育方法が注目されています。

戸田東小中学校だけではなく、戸田市ではかねてからPBLに力を入れており、市内でのプレゼンテーション大会も行われています。

【参考】戸田市小・中学校児童生徒プレゼンテーション大会プログラム - 戸田市教育委員会ホームページ



STEAMタグラグビー

こちらは算数、数学、プログラミングを使って体育の授業でタグラグビーを行う教材です。

問題認識→原因分析→対策立案→トライ&エラー→振り返り
とう流れの中で、各教科を横断して実践的に学べる内容となっています。

まずルールを学びタグラグビーをする

やってみてわかった課題を整理する

課題解決のための、個人の動き、チームの動きをワークブックや端末内のソフトを使って学ぶ

学習を活かして実践で取り組む

体育と数学、プログラミング、一見遠そうに思える教科を結びつけることで、数学やプログラミングが実際には生活に密接に関わっていることが体感できる教材です。

2022年4月には経済産業省のEdTech導入補助金に採択され、無償導入が可能となったので、ますます多くの学校で取り入れられるでしょう。

STEAMタグラグビー|株式会社 STEAM Sports Laboratory
株式会社 STEAM Sports LaboratoryのSTEAMタグラグビーに関する記事33件。小・中・高等学校の体育の授業への導入を念頭に、誰もが楽しむことのできるタグラグビーを起点に、異分野である算数・数学やプログラミング学習等と相互に関連付けた総合的学習指導過程を開発。タグラグビーにおける戦略を多様な見地から...

 

Music Blocks(ミュージックブロックス)

Music Blocksは音楽と算数、数学を組み合わせたソフトです。

論理的に音楽を作ることができたり、また感覚的に数学を理解できたりという両者の良いところが相互の作用する仕組みになっています。子どもたちは遊ぶ感覚で、創作や理解が進む、楽しい工夫がなされたソフトです。

無料ソフトなので、ご家庭でも使えます。

音楽と算数とプログラミングをいっしょに学べる学習ソフト Music Blocks公式サイト
「Music Blocks」は、プログラミングで楽曲をつくる学習ソフトです。音楽・算数・プログラミングを横断的に学べるので、プログラミング教育・STEAM教育の実践に最適です。学校関係者様に向けて、授業で使用していただける教材一式を無償で配布しています。

 

家庭でできるSTEAM教育

ここまで学校での取り組みについて、見てきましたが、ご家庭でもSTEAM教育をサポートすることはできます。
家で伸ばすのに向いているのは、次の2つの能力です。

  • クリティカルシンキング
  • 創造力


なぜなら、これらは特別な設備がなくても少し意識することで、日常会話や生活の中でも鍛えることができるからです。

 

家で伸ばそう!クリティカルシンキング

クリティカルシンキングとは、一つの立場に囚われず、広い視野で考えながら、論理的に問題を解決していく方法です。
問題に対して、前提条件から「そもそもこれが問題なのはどうしてだろう」というところからスタートして、本質的な課題を見つけます。
課題を解決する過程でも、一歩引いてみて、「この立場から考えたらどうだろう」という広い視野で考えます。

家庭でできる一番簡単な方法は、「なんで?」「どうしたら?」をたくさん繰り返して会話することです。

この「なんで?」と「どうしたら?」は日常の様々な場面で使えます。
例えば、砂あびをするスズメを見て「なんで?」
キャンプに行きたいけど、パパからダメだと言われてしまった「どうしたら?」

子どもが自分から自然と考えられる習慣がつくまでは親子で、いろいろなことに「なんで?」と考えてみてください。
必ずしも答えを出す必要はありません。繰り返すことで論理的に考えることに慣れるのが目的です。

 

創造力を育てよう。遊びこそが最高のSTEAM教材

クリティカルシンキングで、いろんな疑問や課題を考える習慣ができたら、そこからさらに形にしてみるのもおすすめです。

問題解決のために何かを作ってみる。何かを加工して新しいおもちゃにしてみるなどの取り組みは創造性をぐっと高めます。

実際に現在クリエイターとして活躍する人たちの中で、小さい頃におもちゃを自分で作っていたといういう方は少なくありません。

工作キットも良いですが、セットの中の専用パーツを決まった場所にはめ込むだけではなく、不格好でも自分で作ったり加工することができると、より考える力が身につきます。

例えば、紙ひこうきひとつにもたくさんの学びがつまっています。

形を変えると飛び方は変わるか?
風上と風下どちらから飛ばすとより飛ぶか?
高い場所と低い場所、どちらから飛ばす方が長い時間飛ぶか?

いろいろ試して、なぜそのような結果になるのか話し合ってみるだけでも大きな学びになります。

自宅で取り組める工作をまとめたサイトはたくさんあるので、ぜひ参考にしてみてください。

小学生自由研究テーマ【工作編】一覧|ベネッセ教育情報サイト
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郡山市ふれあい科学館スペースパークは、宇宙がテーマの都市型科学館です。ギネス認定の宇宙劇場(プラネタリウム)や展示ゾーンで、「宇宙の神秘」と「科学の不思議」にふれてみよう!

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